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羨望 side:詩音⑤
「詩音君!」
部屋に戻ろうとした時、お義母さんに呼び止められた。
「明日はみんな予定がないから、朝はのんびりしよう。無理に起きてこなくていいよ。
朝昼兼用でもいいしね。
お休みー!」
「はい、お休みなさい。」
…後ろから尻尾を振る継がついてくる…
ワクワク期待に満ちた甘い匂いとともに。
…こんな日に限って仁は中々寝付かない。
さっきはしゃぎ過ぎて、興奮してるのかもしれない。
ベッドで待つ継からは、少しずつ苛立ちの匂いがし始めた。
仁を抱っこして背中を優しくトントンしながらら、ウロウロと部屋の中を歩く。
…何でそんな目で見てるの?
仁が邪魔なの?俺達の子供だよ!?
何だか悲しくなってきた。
しびれを切らしたのだろう、継が俺から仁を奪うように抱っこした。
ムカッとした俺は、また継から仁を奪い返すと、黙って部屋を出た。
リビングまで下りていくと、まだお義父さんとお義母さんがいて、優君のお相手をしていた。
こちらもお目々がぱっちりのようだ。
「あれ?詩音君、どうしたの?」
「仁が寝付かなくて…継のご機嫌が悪くなってきて…避難してきました。」
「…そっか…優君も…ご覧の通りだよ。」
見ると、きゃはきゃは 大騒ぎしながら、絨毯の上をコロコロと転がっている優君が目に入った。
そして…こちらもちょっぴり不機嫌な匂いのお義父さんが…
お義母さんと目が合い、ウインクされた。
ピンときた。
流石に親子、そっくりだ。
「あー、何だ…優君も起きてるのか…」
「…継…」
「何だよ、もう。子供は寝る時間だろ?
優君…寝ない子はこうしてやるぞ!」
継が優君を擽ると、キャーキャー大声で笑い出し…その後、電池が切れたオモチャみたいに…寝てしまった。
お義父さんが
「寝ちまった…継、お前やるなぁ…じゃあ、俺は行くぞ。
かーちゃーん、優君連れて来てくれ。」
そそくさと退散して行った。
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