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羨望 side:詩音⑩
「……だろ?………なくちゃ。うん、いい子だ。」
何だろう…継?誰と話してるの?
ゆっくりと目を開ける。
少し離れたソファーに、仁を抱っこした継が座っているのが見えた。
その手には空っぽの哺乳瓶が!
びっくりして飛び起きた。
「継っ!?ごめんなさいっ!俺、起きれなくて」
「おはよう、詩音。
仁!こらっ、暴れるなよっ!
…ママを見た途端にこれか…どんだけママのことが好きなんだ?
でもな、いくら息子でも詩音は俺のものだから、お前なんかにはやらないぞ。」
「ぶぅーーっ」
仁が手足をバタつかせて抗議している。
「痛たたたっ!こらっ、仁っ!」
俺…いつの間にか着せられてた。
おかしくっておかしくって、くすくす笑いながら仁を受け取った。
「仁、おはよう。
パパにミルクもらったの?良かったねぇ。」
優しくトントンと背中を摩ると、げぷっ と大きなげっぷをした後に、甘えるひと声。
「あーあーあー」
「…何だよ…甘え腐って…俺とは態度が ぜんっぜん違うじゃないか。
おい、仁!」
「うーーー」
くすくすくすっ
ひょっとして、“俺”争奪戦!?
「仁はもうお腹一杯だろ?
ママ達もご飯にするから、パパといい子にしてるんだよ?」
「あーあーあー」
チッ
「けーいー…」
「分かった、分かりましたよ。」
仁をまた継に預け、その拍子に頬にキスを一つ。
「詩音!!!…あの…ここにも。」
とんとんと自分の唇を突く継。
真っ赤になりながらも、かすめるようなキスをして、慌てて部屋から出て行った。
「あ、お義母さん!おはようございます!」
「おっ、詩音君、おはよう!
朝昼兼用のご飯、一緒に作ろうか。」
「はいっ!」
ご機嫌な優君と仁を横目に、少し不機嫌なお義父さんと継。
そして、おかしくて堪らないお義母さんと俺。
今日もまた、賑やかな一日がスタートしたのだった。
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