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疑念⑦
ぽんぽんと頭を撫でられる。
子供をあやすような優しい触り方。
布団越しにぎゅっと抱きしめられ、継の匂いに包まれる。胸が…痛い…
「詩音…俺の何がお前を苦しめてるんだ?
頼む…教えてくれ。
こんなに体調を崩す程、俺は一体お前に何をしたんだ?」
咎める訳でもなく、ひたすらに優しいトーンの声。
しゃくり上げて泣く俺が泣き止むのを待ってくれていた。
俺を思う継の匂いが俺を落ち着かせていく。
「…さっき、継の…スーツに…」
「うん」
「…誰かの……香水の、匂いが…」
「ん、………香水?」
黙って頷く俺に、継は両手を振って
「ちょっと待って!?誤解だっ!それ、試作品っ!」
試作品???
鼻をぐすぐす鳴らし、涙を一杯に溜めたまま首を傾げる俺に
「そう、それ試作品だよ!
兄貴の同級生が調香師でさ、今度新作を作るのに、そのテーマが『君を思い出す』ってやつで、協力してるんだ。
限定100名で、その人のためだけのオンリーワンの香水を作るんだって。
詩音のイメージを伝えて…華やかで甘くて、ちょっぴりスパイシーで、清潔感があって清々しい、二十四時間嗅いでいたい匂い って、作ってもらってるんだ。
今日帰りに“第一号の試作品ができた”って、持ってきて使ったんだけど、イマイチ俺の中の詩音と違うって、伝えて別れたんだよ。
家にそのボトルがあるよ。
兄貴にも聞いてよ!一緒に協力してるから!
右京さんモデルで作ってるはずだよ!?
そいつは、兄貴の結婚式にも来てたから、右京さんも顔を覚えてるはずだよ!
…詩音、ひょっとして俺が浮気してるって思ってたの?」
こくりと頷いた。
継は「はあああっ」と大きなため息をつきながら、天井を見上げた。
「…そうか…そうだったのか…
詩音は『超嗅覚』、人一倍匂いに敏感…
俺のスーツの残り香を勘違いしたんだな。
詩音…俺はどんなことがあっても、お前だけだ。
心配するようなことは何もないんだよ。」
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