今ではすっかり慣れてしまった食べ方に、抵抗する気も更々なくて、口元に運ばれる物を咀嚼し嚥下する。 それを見つめる継の蕩けそうな視線を浴びながら食べさせてもらい、ほとんど食器も空になった。 「…ご馳走様でした。」 それを聞いてやっと自分の分に手を付けた継は、見る間に平らげて、さっさと片付けに行ってしまった。 その間に慌てて洗面を済ませ、鏡に映った自分の顔を見て驚いた。 目が腫れ頬は削げて、如何にも病人という顔付き。 こんなんじゃダメだ… 自分の勝手な思い込みで、みんなを振り回して、挙句に体調まで崩して。 でも…ホントに嫌だったんだもん。 継は…継は俺だけの… 「詩音、起きても大丈夫なのか？」 心配そうな声に振り向くと、継がこちらに向かってきていた。 背後から抱きしめられ、継の匂いに包まれた途端、ホッとして身体中の力がかくりと抜けた。 「詩音!?」 慌てふためく継に「大丈夫です」と告げ、ベッドに運んでもらった。 俺、こんなにどうしようもないほど、継のことを愛してしまっているんだ… 俺からぶわりと、継を思う匂いが溢れ出してしまった。 すんすんとその匂いを嗅いだ継は 「詩音…」 俺の名だけを呼び、抱きしめてきた。 「こんなに…こんなに俺のことを… 詩音、辛い思いをさせてごめんな…愛してるよ…」 それから… 濃厚なキスだけでぐったりとなった俺と、身体を縮こまらせて俯く継を巡回に来た香川先生が呆れたように見下ろしていた。 「…継…お前、詩音君の退院まで出入り禁止。 詩音君、あと二、三日入院ね。」 「先生〜、そんなぁ」 「問答無用。はい、さようなら。」 先生に連れ出され、俺の名を呼ぶ継の声が段々と遠ざかっていった。 恥ずかしいのとおかしいのとで、一人笑う俺は、早く元気になってあの猛獣の元へ帰らねば、と心に誓うのだった。