641 / 829
デート♡デート♡デート♡①
side:継
香川先生からお預けを食らった俺は、親父や兄貴に散々馬鹿にされ、お袋や右京さんのやや冷たい視線に耐えつつも、詩音の退院を心待ちにしていた。
「ママはもうすぐ帰ってくるからな。
仁、お前もいい子にしてろよ」
「ままー、ままー」
「うん。早く会いたいよな。」
「ぶうっ」
仁の相手をしつつ、毎日今か今かと待っていた。
俺が迎えに行くと言うのを『お仕事優先!』と一刀両断に却下され、結局お袋が行くことになった。
相変わらずの詩音。
そうして退院当日、ため息をつきながら仕事をこなす俺の元にラ○ンが!
『無事退院しました。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。』
何とも事務的なメッセージ…
詩音らしいと言えばそうなんだが。
携帯を見ながらため息をつく俺に、篠山さんがコーヒーを出してくれた。
「詩音様、無事に退院なされたのですね。
良かった、良かった。
社長、今日はこの後一件だけ面会の予定がありますが、その後はフリーです。
急ぎの仕事もありませんから、今日は直帰なさっても」
「篠山さんっ!ありがとう!
ぜひ、ぜひそうさせて下さいっ!」
篠山さんの言葉を遮り、気の利く優秀な秘書殿の手を握りしめてお礼を言い、退院祝いを何にしようかと、そればかりを考えていた。
「じゃあ、篠山さん、後はよろしくお願いします!」
訪ねて来た取引先相手をやんわりと早々に帰し、俺は鞄を引っ掴むと走り出した。
そして向かったのは、右京さんが務めていた花屋。
「こんにちは!お願いしてた物は…」
「継君、いらっしゃい!できてますよ!
奥様ラブでいいですねぇ。」
もうすっかり懇意になった店長に揶揄われながら、代金を払い花束を受け取った。
ずっしりと重い真っ赤なバラの花束。
詩音…俺の愛を受け取ってくれ…
詩音はどんな顔をするだろう。
ウキウキしながら帰宅した。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!