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麻生田家嫁惚気大会⑦

「匂いも強烈に甘かった… あぁ、右京さん、お義兄さんに本当に愛されてるんだな、って…俺、羨ましかった…」 「詩音君…」 「俺、継を邪険にしてたから…甘えるのも甘やかすのも余裕がなくって… 継は…継は、俺のことをいつも一番に考えてくれてるのに… 俺…継に甘えたいし、甘やかしたい…」 「詩音君、大丈夫! 番なんだから根っこの部分はちゃんと分かってるよ。 何たって、“運命の番”なんだよ! でも、いくら粗方匂いで分かってても、肝心なことはきちんと言葉で伝えないとね! 潤も継も、デートの前後では全然顔が違うよ。 『愛されてる』って分かって安心したんだろうね。 二人とも、息子達の番になってくれて本当にありがとう。」 俺と右京さんは顔を見合わせて頷いた。 「俺達って、本当に旦那さんのことが大好きなんだよねー。 あー…パパに会いたくなっちゃった。 早く帰ってこないかなぁ…」 「お義母さん…惚気ですかぁ?」 「えへっ。 右京君だって潤に会いたくなっただろう? 詩音君だって!」 「もう、お義母さん、揶揄わないでよぉーっ。 会いたいに決まってるじゃん!」 「…はい。会いたいです…」 黙りこくった俺達は三人三様、其々(それぞれ)の伴侶に思いを馳せる。 妄想と膨らむ期待とで、甘い匂いが充満していく。 きっと、お義母さんと右京さんには、ピンクのハートが飛んでいるのが見えているのだろう。 「ただいまー! かーちゃぁーーん!帰ったよぉ♡」 お義父さんの声が玄関から聞こえてきた。 「あっ、パパだっ! パパぁ!お帰りなさーい!」 跳ねるようにパタパタと廊下を走っていくお義母さん。 俺と右京さんは顔を見合わせて微笑んだ。 それぞれの伴侶の『ただいま』の声をドキドキワクワクして待ち遠しく思いながら。

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