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熟年デート②
パパから、ほわほわとピンクのハートが飛んでくる。
もう…パパの気持ちは分かってるから、それ収めてよ。
右京君に見えちゃうし、詩音君には甘い匂いで分かっちゃうじゃん。
ちょっと…恥ずかしいよ…
「かーちゃん、お嫁ちゃん達も快く送り出してくれるから、遠慮なく楽しんでこような!」
「…はい、パパ…」
パパが俺にキスしようとしたその時
ふえっ、ふえっ、うわーーーーーん!!!
大音量の泣き声で、チビ助達の合唱が始まった。
「うわっ、オムツかおっぱいか!?
二人ともよく寝たな…俺、部屋に退散するよ!」
「右京さん、俺もっ!」
ごめんなさい、とお嫁ちゃん達はそれぞれの子供を抱っこしてパタパタ出て行ってしまった。
取り残された俺達は、顔を見合わせ、おデコをくっ付けて、くすくす笑った。
何て幸せな時間。
泣き声すらも愛おしい。
パパは俺をそっと抱きしめて
「真澄…俺達の命を紡いでくれてありがとう。
お前が素敵だから、あんなにいい子達が嫁に来てくれた。
…お袋のことでは、本当に辛い目に遭わせてすまなかった。
許してくれなんて言わない。
ただ『愛してる』とだけ…言わせてくれ…」
パパの言葉に驚き、胸を押して少し距離をとって見つめた。
まだ…そんな風に思ってたんだ…
悲しげな瞳を見た途端に胸がきりりと痛んだ。
大きく見開いた目に、段々と涙が溜まってくる。
泣くつもりなんてないのに。
もう、俺の中では終わったことなのに。
「真澄、守ってやれなくてごめんな。」
ダメだ。
あの時の様々な場面と感情がフラッシュバックして、呼吸が止まりそうになっている。
「真澄っ!?」
慌てたパパが俺を横抱きにすると、寝室へと運んでくれた。
紙袋を口に当てられ、背中を摩られていると、少しずつ落ち着いてきた。
過呼吸?
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