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熟年デート⑤
とうとうその日がやってきた。
ワクワクドキドキしながら迎えたデート当日、俺はパパに喜んでもらうべく、朝イチで予約した馴染みのエステサロンにやって来ていた。
「いらっしゃいませ、麻生田様。
先日はお嫁さん達にもご利用頂きましてありがとうございました!
お二人とも喜んで頂けたのでしょうか?」
「はい、勿論!
最初はね戸惑ってたんだけど、とっても喜んでたよ。
また連れてくるね!」
「ありがとうございます!
じゃあ、今日も張り切って美しさに磨きをかけていきますよー!」
俺の担当はベテランの水口さん。
この人の手は“ゴッドハンド”と言われるくらいに凄くて、リンパマッサージされると、毒素が全部流れていく気がするんだ。
日頃の家事や孫守りで酷使している身体が、次第に解けていき、あまりに気持ち良くて、段々と意識が遠のいて行く。
「…麻生田様…麻生田様…」
名前を呼ばれ、気付いた時にはもう施術が終わっていて、程良い倦怠感を纏った身体をゆっくりと起こした。
「あー…水口さん、最高!また寝落ちしちゃった…」
「ありがとうございます!
今日は特に気合を入れてさせていただきましたからね。
どうぞ楽しんでいらして下さい。」
「ありがとう…なーんかちょっと恥ずかしいんだけど。」
「いいえ、幾つになってもラブラブって素敵ですよ。
実は私も今度の休みに…ふふっ。」
「ホントに!?
じゃあ水口さんもピカピカにならなきゃ!」
「ええ、そうですね。我ながら乙女みたいにドキドキしちゃって…」
「うんうん、分かる〜。水口さんも目一杯甘えたらいいよぉ。
ツルツルピカピカにしてもらったから、思いっ切り楽しんでくるね!
ありがとう!」
ドキドキが止まらないままサロンを後にした。
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