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余韻⑦
自分なりのチェックをして慎也さんの側に戻ってくると
「そんなところも好きなんだよ。」
と笑いながら鼻先にキスをされ、手をぎゅっと握りしめられて、ひと夜の愛の巣を後にした。
…もう少し甘えたかったな…って、後ろ髪を引かれながら。
支配人達の丁重な挨拶を受け、面映ゆい気持ちで車に乗り込んだ俺は、もういつもの『まーちゃん』に戻って
『今晩のおかずは何にしよう』
なーんて考えていた。
運転する慎也さんの指がしっかりと絡んだままなのに。
家に着いたらまた『かーちゃん』と『パパ』に戻るんだなぁ…なんてボンヤリと考えていると
「真澄…二人の時は名前で呼び合おうな。」
と慎也さんが、握る手に力を込めて言ってきた。
照れ臭そうな横顔と、漏れ出すピンクのハートに思わず顔がにやけてしまう。
「はい、慎也さん!」
ラブラブのハートが飛び交い、甘ったるい匂いの車内で幸せを感じながら、スーパーで買い物をして、両手一杯の荷物と一緒に帰宅した。
「「ただいまぁー!」」
「まぁーちゃーーん!」
「まぁーちゃーーーっ!」
「「お帰りなさいっ!!」」
かわいい嫁や孫達に大歓迎で迎えられた。
優君と仁君はへばり付いて離れない。
「こらぁ、優!
まーちゃん動けないじゃん…一旦離れろ!」
「やぁっ!まーちゃん、すきっ!」
「仁…後で抱っこしてもらおう、ね?
ほら…言うこと聞いて!」
「ぶうっ!まーちゃ、まーちゃ!!」
「優君、仁君…まーちゃんは、じいじのものだからな。」
幼い孫相手に釘を刺すパパは、苦虫を潰したような顔をしている。
そんなじいじを無視してくっ付いているかわいい二人の孫。
それを見守る嫁二人は、笑いたいのを堪えて肩が震えている。
パパ…慎也さん…嫁も孫もとってもかわいいけれど、あなたが一番ですよ。
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