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青天の霹靂①

side:詩音 出産前から産後もずっと。 お義母さんや右京さん達に優しくしてもらい、困ったことや辛いこと全て、あっという間に解決できた。 居心地の良さに、図々しくもまるで自分の家のように過ごしていた。 “これ以上甘えてばかりはいられない”と継と相談の上、そろそろ継の実家をお(いとま)することにした。 お義母さんは勿論、お義父さんやお義兄さんにも引き止められた。 右京さんには泣かれた。 「何か詩音君の気に入らないことでもしでかしたのか? 嫌なことがあるなら言ってほしい、直すから。」 優しい兄嫁は、そう言って号泣してしまった。 「右京さん、大好きです! 嫌なところなんてひとつもないです! でも、俺達甘え過ぎたらダメになっちゃう!」 こんなに大事にしてもらってて出て行くなんて、そんな決断をして良かったのか…決心がぐらついたが、継が 「いつまでも甘えていては俺達が自立できない。 でも、詩音が辛い時には助けてほしい。 これが今生の別れではないのだし、昼間、詩音と仁がお邪魔すると思う。 そのうち、また二人目ができるかもしれないし。 そうなったら、またお世話になります。」 と言ってくれて、右京さんは俺達から出る“色”を見て納得したのか 「…すぐに帰ってきて…」 と、ぐすぐす鼻を鳴らしながらも快く送り出してくれることになった。 それからが大変だった。 生活に必要なものを運び込んでしまっていた上に、仁の物が増えている。 慌ただしく荷造りを済ませて、さあ、あとは引越し業者さんを待つだけ…というその当日に事件は起きた。

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