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青天の霹靂⑤
ピンポーーーン ピンポーーーン
「誰だろう…引越し業者はキャンセルしたんだが…」
お義兄さんがひとり言を言いながら、玄関に向かった。
「どうぞ。」
「お邪魔します…」
あとに続いて、遠慮がちに部屋に入ってきたのは見知らぬ人…
えっ、誰!?
「和樹っ!和樹っ!」
一直線に和樹君の元に走り寄り、寝ている和樹君を抱き上げて頬擦りしている男性。
井上さん?
俺達の視線に、ハッと我に返った井上さんは、和樹君をそっと布団に下ろすと、いきなり土下座をした。
「この度はご迷惑をお掛けして大変申し訳ございませんでした!
ご家族を巻き込んで大変なことに……本当に何と言ってもお詫びして良いやら…」
「そんなことより奥様は?早く探さなくては!
今、うちの両親と兄嫁が探しに行ってくれています。
多分、和樹君を家の誰かが見つけるのを見届けてから、ここを立ち去ったと思われるので、そう遠くには行ってないはず。」
「大奥様から連絡をいただいて、すぐ警察にも連絡しました。
取り急ぎ、こちらに急行した次第で」
ピリリリリ ピリリリリ
話を遮るように、継の着信音が鳴り出した。
「はいっ、継です。
えっ、見つかった!?……良かった…
うん、井上さんも今、家にいるよ。
うん、うん、分かった。
ありがとう。」
継は携帯を切ると井上さんに告げた。
「奥さん、見つかったそうです。
取り敢えず、こっちに連れてくるそうです。
兄貴、右京さんが見つけて確保してくれた。
本当にありがとう。」
「本当に、申し訳ございませんっ。
全部、全部俺のせいで…」
「詳しいことは、みんな揃ってから話してもらってもいいですか?
…和樹君は、あなた方ご夫婦のお子さんで、間違いないんですよね?」
継が真っ直ぐに井上さんを見据えて言った。
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