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青天の霹靂⑦

それにつられて、今度は泣き出したチビ助達を連れ出した右京さんと俺は、『避難部屋』に逃げ込んだ。 「…よしよし…もう泣かなくてもいいから…… ねぇ、詩音君、優も仁君も、優しい子に育ってるね…」 えぐえぐとしゃくり上げる仁の背中を摩りながら、俺は落ち込んでいた。 同じように優君の背中を撫でている右京さんから、俺を気遣う優しい匂いがしてくる。 「…子供でもあんなに優しくできるのに… 俺は、あの人に対して、そんな気持ちも全く無かった… 凄く意地悪で、醜い心しかなかった…」 「詩音君、だって君はある意味被害者だよ? 俺だったら、浮気の疑いを持ったあの時点で、潤を一発殴ってるよ。 でも、詩音君は、継君を信じた。 俺には真似ができない。凄いことだと思う。 …あの人を見つけた時、ビンタの一つでもお見舞いしたかったんだけど…」 ふうっ…と大きく息をした右京さんは続けて 「どんな理由があれ、子供をあんな目に遭わせるなんて、俺は許せない。 ましてや、関係のない人達を巻き込むなんて。 同情はするかもしれないけど、この子達みたいに優しくできなかった。 …落ち込んでるのは詩音君だけじゃないんだよ。」 「右京さん…」 「俺も意地悪で醜い心しかなかった。 久し振りにハラワタ煮えくり返ってる。 俺って、こんなに嫌な奴だったんだ、って落ち込んでる。 チビ助達の優しい振る舞いがあったから特に。 …ちゃんと理由は聞かなくちゃね。 詩音君は嫌な思いをしたし、継君だってあらぬ疑いを受けたんだし。 この子達が落ち着いたら戻ろうか。」 そう言って、右京さんは俺の頭を撫でてくれた。 優しい兄嫁は、やっぱり優しくて強くて逞しかった。

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