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台風一過、その後は①

中途半端な時間に、朝昼兼用の、それも大量のご飯を食べたせいか大してお腹も空かず、それよりもみんな胸が一杯で、夜は軽めに済まそう、ということになった。 まだ何だか頭もふわふわして、考えが纏まらない。 継は… あれから俺にぴったりとくっ付いて離れない。 俺も…黙って継にくっ付いていた。 お義兄さんは、右京さんを労わるように、そっと寄り添っている。 右京さんも、くったりと身体を預けている。 お義父さんとお義母さんは、相変わらずのラブラブっぷりで、二人の世界に入り込んでいた。 仁と優君は、ころころ転がったり這いずったり、自由に動き回っていた。 …井上さん達のことを誰も話題にしなかった。 ただ、愛する伴侶のことを、家族のことを思い、静かにただ流れる時間を過ごしていた。 継を…信じて良かった。 『俺を信じて』という濁りのない澄んだ匂いを信じて良かった。 お義母さんも右京さんも、継から流れる“色”に嘘はないと断言してくれて… スーパーΩで良かった…と、この能力に感謝した。 でも、感情の匂いを嗅ぎ取る能力(ちから)がなかったら、俺は継を信じきる事ができただろうか… 不安になって見上げると、継の視線と打つかった。 ダイジョウブ ダイジョウブダカラ シンジテクレテ アリガトウ アイシテル アイシテル 思わず継にしがみ付いた。 自然と溢れ出す涙を拭うこともできずに、ただ継の胸に顔を埋めて泣いた。 いろんな感情が混ざり合い、泣き続ける俺の頭を背中を継の大きな手の平が摩ってくれる。 怖かった。 俺以外の誰かを一度でも愛したらどうしようかって。 自信がなかった。 こんなに一途に愛されているというのに。 継、継…俺だけの、大切な継…

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