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台風一過、その後は④
「右京さん…」
「大丈夫!
俺にはちゃんと守るべき大切な人達がいるから。
落ち込んでなんかいられないよ!
ごめんね、詩音君。
逆に心配してもらっちゃって。
詩音君の方が大変だったのに。
あのね、最近感情の浮き沈みが激しいし、体調も思わしくなくって…
だから余計にイライラしてて、八つ当たりみたいになっちゃったのかも。」
「そういえば…右京さん、最近ご飯の量減ってないですか?
さっきも…少し食べてすぐ『ご馳走さま』って…」
「んー…何か食欲がないし、気持ち悪いんだよね。
夜眠れてないせいかも。」
「…右京さん、ひょっとして…それ『悪阻 』じゃ…」
「えっ!?」
俺達は顔を見合わせた。
右京さんは首を傾げ考えていたが、何か思い出したのか、ぼふっ と音が出そうなくらい真っ赤になった。
「…この間の発情期 の時に、またお義母さんに優を預かってもらったんだよね…
香川先生のオッケーも出てたし、ちょっと盛り上がっちゃって…その…スキン付けずに…
…きっとその時だ…
優の弟か妹…できちゃったかも…」
「やったぁ!!!
右京さん、おめでとうございますっ!!
あっ、でも、病院行って診てもらわなきゃ!
俺、優君見てますっ!」
「詩音君、落ち着いて!
今日は病院休みだから!
明日にでも行ってくるよ。その前に検査薬で調べてみる。
あとで買い物行くから、その時にでも…」
「うわぁ…うれしいなぁ…
右京さん、俺手伝いますから、何でも言って下さいね!」
「いや、まだハッキリ決まった訳じゃないし!
その…ぬか喜びになっても困るから…」
「分かってます。それまではナイショで。」
「うん、ナイショで。」
ふふふっ と笑う右京さんからは、甘やかな優しい匂いと、もう一つ…淡く優しい匂いがしていた。
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