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台風一過、その後は⑤

その後、右京さんは“買い物”と称して一人でこっそり外出した。 ついて行きたいと おねだりするお義兄さんに、無理矢理優君を預けて。 いつもなら、優君を預かって『潤は運転手で行っておいで』と言うお義母さんは、心身共に草臥れたのか気付かずぼんやりしている。 お義母さんにとっても衝撃的な事件だったのだ。 ヨロヨロとキッチンへ立ったお義母さんの後を追いかけて行った。 「ねぇ詩音君、晩御飯どうしようかな… 何か食べたいものある?」 「いえ、特に…何だかもう、今日は気力が… 冷蔵庫何が残ってたかな… 麹漬けのモモ肉もあるし、野菜も買い置きしたのがあるのでそれ使いたいし… あ!サバ缶もありましたよね!」 「じゃあ、今夜はそれで。 ちゃっちゃっと済ませちゃおう。 あと、右京君用に何か口当たりのいいもの作ろうか。」 「お義母さん…あの」 「優君のお世話で睡眠不足続いてるみたいだし。 これ以上体調崩すようなら、一度香川先生に診てもらわなくちゃ。 それとも…違う理由だったりして。 なんちゃって。」 お義母さんはウインクをすると、冷蔵庫を開けて食材を取り出した。 俺もそれを受け取りながら、右京さんが少しでも口に入れることができるレシピをいくつか思い浮かべていた。 お義母さんと一緒にご飯を作るのは大好きだ。 麻生田家の味付けも、いろんなレシピも教えてもらえる。段取りの良さも。 そして何よりも、たわいの無い会話が楽しくて仕方がない。 あのマンションに帰ったら、こんなことできなくなるんだ… そう思ったら、何故か泣けてきた。 「し、詩音君?どうしたの? 何処か痛むの? 早く横になって!」 俺はふるふると首を振り 「お義母さん、違うの。 引越しして向こうに帰ったら、もうこうやってお義母さんとご飯作れなくなるんだって思ったら…」 お義母さんが、ぎゅっ と俺を抱きしめてきた。

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