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台風一過、その後は⑥
お義母さんは俺の背中をヨシヨシと撫でながら
「だからね、好きなだけここにいていいんだよ。
幸いなことに部屋は沢山あるからね。
お孫ちゃん達の子供部屋を用意できるほど。
それでも足りなくなったら仕切ってもいいし、空き地に別棟建ててもいいんだ。
遠慮して無理に出て行こうとしなくてもいいんだ。
甘えられる環境って最高じゃないか!
困った時はすぐに手を貸してあげれる。
…今日みたいなことがあったら、特に…」
「お義母さん…」
「もう一度、継と話し合いなさい。
右京君も、絶対喜ぶから。
詩音君が家を出るって行った時、『行かないで』ってあんなに泣いてただろ?」
「…はい。」
えぐえぐと泣く俺の涙をそっとティッシュで拭いてくれたお義母さんは
「さ、右京君用のおかずを作るよ!」
と微笑んだ。
優しくて優しくて…余りにも優しい匂いに、また泣いてしまった。
全ての料理が出来上がる頃、右京さんが帰ってきた。
「ただいまー!」
玄関によちよち走って行った優君を抱き、手にビニール袋を下げて、キッチンに顔を出した右京さんは
「ただいま!あっ、ご飯の用意…ごめんなさい!」
「あれ?右京君、出掛けてたの?
いいんだよ!今日はもう冷蔵庫の残り物にしたんだ。
ほら、優君おいで!」
お義母さんは右京さんから優君を受け取り、真顔で見た後
「…右京君、ひょっとして何か報告ある?」
と首を傾げながら尋ねた。
途端に顔を真っ赤にして、あわあわと慌てる右京さんは、こっそりと
「あの…優の弟が妹が…できた、みたい、です。」
とささやいた。
優君を抱いたままガッツポーズをするお義母さんと、飛び跳ねて万歳する俺。
きゃいきゃいはしゃぐ俺達を不思議そうに見ていた優君も大はしゃぎで、床に下りると右京さんの足元に纏わり付いた。
「潤、びっくりするよ!
早く知らせておいで!」
「はいっ!」
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