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台風一過、その後は⑦
「潤、ちょっと…」
右京さんはリビングにいたお義兄さんを呼び出すと、二人で部屋に行った。
数分後、うおーーーっ という雄叫びが聞こえ、バタバタとキッチンに駆け込んできたお義兄さんが大声で叫んだ。
「みんなー!ちょっと来てくれっ!」
「何だ何だ。どうしたんだ?」とお義父さんと、仁を抱いた継がソファーに座ったまま、訝しげにお義兄さんを見つめる。
そして優君を抱いたお義母さんと、俺が笑いを堪えながら座った。
その後に、右京さんが恥ずかしそうに顔を出した。
お義兄さんは右京さんを引き寄せると
「優に弟か妹ができるっ!
俺達にまた新しい家族が仲間入りしますっ!
何卒、よろしくお願いしますっ!」
と声高らかに宣言した。
その後は…ちょっとしたコンサートのノリのように大騒ぎで…
「何だか『原因と結果』が並んでいるようで…
二人目でも何かやっぱり恥ずかしいんだけど。」
と頬を赤らめる右京さんがかわいくて。
「右京さん、月曜日は優君預かりますから、ちゃんと香川先生に診てもらって下さいね!」
「詩音君、ごめんね。甘えちゃうよ。
優がヤンチャしたら叱ってね。」
「ふふっ。分かりました!」
そんな会話の最中も、お義兄さんは右京さんにべったりで、愛おしそうにお腹を撫でていた。
いつもなら人前でそんなことをしたら一発張り倒されかねないのだが、今日は容認したのか、右京さんはお義兄さんの自由にさせている。
幸せそうな二人からは、ふわふわと優しくてお互いを思い合う匂いがしている。
それと、まだ薄くてほとんど分からないくらいのワクワクする匂いが…
ああ、ちゃんとお腹にいるんだね。
俺は詩音。元気で生まれておいで。
オムツも替えてあげるし、お散歩も行こう。
君の従兄弟の仁も一緒にね。
うれしくってドキドキワクワクする。
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