704 / 829

台風一過、その後は⑧

その夜はちょっとした宴会みたいになった。 お義兄さんを中心に、旦那連中は祝酒だと酒を酌み交わし、朝のあの事件の憂さ晴らしをするようにご機嫌だった。 お義母さんは 「せっかくのおめでたいことだったのに、こんなことなら有り合わせの残り物にしなければ良かった…」 と、しょげていたけれど、右京さんが 「だって、今思いっきり食べられないもん! 落ち着いたら、お義母さんの唐揚げ嫌になるくらい食べさせて!」 とおねだりすると、ちょっぴり涙目のお義母さんはやっと微笑んでいた。 右京さんは俺が作ったおかずを喜んで食べてくれ 「久し振りにご飯食べれた!」 と、言ってくれた。 ホッとした。 いくら悪阻が病気ではないとはいえ、食が細くなるとやはり心配になる。 「詩音君、迷惑かけちゃうけど…よろしくね。」 「とんでもない!迷惑大歓迎ですよ! ふふっ…楽しみだなぁ… 優君、お兄ちゃんになるんだよ。 赤ちゃんかわいがってあげてね!」 優君に話し掛けると、分かっているのかいないのか、にぱぁーっと満面の笑みで、スプーンを振り回していた。 賑やかな夕食と片付けと、それぞれにお風呂も済ませると、慌ただしく過ぎた一日がやっと終わった。 みんなに 「お休みなさい」 の挨拶を交わし部屋に戻ると、どおっ と疲れが出てきた。 フラつく俺を抱きとめた継は 「詩音!?大丈夫か? あぁ…今日は俺のせいで…ごめんな…」 と労ってくれた。 「継こそ…ちょっぴり疑って…ごめんなさい…」 「でも、信じてくれたじゃないか。」 継は俺にキスをすると 「早く詩音を補給させてくれ。」 と呟いた。 無意識にベビーベッドを見ると、一足先に継に連れられて部屋に戻っていた仁は、大の字になって寝ていた。 その視線に気付いた継は、微笑みながら言った。 「今日は優君と一緒に大はしゃぎだったからな… さぁ、詩音…おいで…」 請われるままこの身を預けた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!