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台風一過、その後は⑨
熱い吐息と絡み合うフェロモンに煽られて、言葉を交わす余裕もなく、唇を貪り合う。
ぬちゅ じゅっ じゅるっ
溢れる唾液を飲み合い、もどかしくお互いの衣服を脱がせ合って、 ベッドに倒れ込んだ。
「…詩音…詩音…」
ひたすらに名前を呼ばれ、その奥に飲み込んだ『愛してる』という言葉は、饒舌な匂いとなって俺に纏わり付いてくる。
ぞくぞくと背中を走る甘い痺れは、お腹の奥に辿り着いて、きゅうきゅうと収縮していた。
「…継、継…」
俺も継の名前を呼ぶことしかできず、彼の逞しい背中に腕を回し、その存在を確かめていた。
あの時、ちらりと浮かんだ思い…
『俺以外の誰かを愛したなら』
俺は、もう生きていけないだろう。
継なしでは。
もし継に『他に好きな人ができた。お前なんかいらない』と言われたら、俺は…
「詩音、泣くな。」
知らず流れ落ちた涙を優しく舐め取られた。
目の前には愛して止まない番の顔があった。
「心配掛けてすまなかった。
でも、そんなことは命に掛けて有り得ないから。
俺は、詩音だけを愛している。」
抱きしめられてまた口付けられる。
継の温かな肌と嘘のない匂いに包まれて、やっと落ち着いた。
はぁ…とため息をついて見上げると、そこには欲を孕んだ猛獣がいた。
「俺は詩音のものだ って証明させてくれ。」
ぞくりとした。
Ωの本能が叫ぶ。
コノオトコガホシイ
メチャクチャニ アイシテホシイ
ココロカラ アイシアイタイ
次の瞬間、俺は継の唇に噛み付くようにキスを仕掛けた。
下半身に擦り付けられる継自身は強度を増し、火傷しそうに熱い。
ハヤク、ハヤクソレヲ オレ二チョウダイ
ソノネツノカタマリヲ ハヤクオクニ
おしゃべりなフェロモンに煽られるように、継は枕元の小箱からスキンを引っ張り出した。
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