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旅立ちを見送る④

右京さんがいなくても愚図ることのない優君は、何かを感じているのか物凄くお利口さんだった。 継に頼んで、チビ助達を順番にお風呂に入れてもらいご飯を食べさせると、しばらく二人でことことと仲良く遊んでいたが、うつらうつらとし始めたかと思ったら、二人仲良くぐっすりと寝入ってしまった。 リビングに布団を持ってきて二人を寝かせると、継がきつねうどんを作ってきてくれた。 「これなら食欲がなくても口にできるだろう。 無理しなくてもいいから、食べれる分だけ食べなさい。」 「継…ありがとうございます…いただきます。」 出汁を沢山吸った揚げは、ふっくらと柔らかくて、噛み締めると優しい味がした。 「…美味しい…」 「口に合って良かった。 うちは、誰かが風邪を引いて寝込んだり、具合が悪い時は必ずこれなんだ。 俺も兄貴も、これだけは自信を持って作れるんだよ。 右京さんや詩音が悪阻の時はよく登場してただろ?」 「あ…そう言えば…」 しっかりと鰹節の味がする喉越しの良い出汁は、気分が優れない時でも少し口にできた。 ぽろっ 「右京さん…今頃…うっ、うえっ、うえっ」 また泣き出した俺の頭を優しく撫でてくれた継は 「ほら…お前まで具合が悪くなったら大変だろ? しっかり食べて、優君の面倒も見なくちゃ。」 頷いて、泣きながら食べた。 しゃくり上げて、上手く飲み込めなかったけれど、一生懸命に啜って食べた。 片付けを終えた頃、お義父さんとお義母さんが帰ってきた。 お義兄さんは、右京さんに付き添うんだって。 継が二人にうどんを振る舞うと、お義母さんはそれを見て、また泣いていた。

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