710 / 829
旅立ちを見送る④
右京さんがいなくても愚図ることのない優君は、何かを感じているのか物凄くお利口さんだった。
継に頼んで、チビ助達を順番にお風呂に入れてもらいご飯を食べさせると、しばらく二人でことことと仲良く遊んでいたが、うつらうつらとし始めたかと思ったら、二人仲良くぐっすりと寝入ってしまった。
リビングに布団を持ってきて二人を寝かせると、継がきつねうどんを作ってきてくれた。
「これなら食欲がなくても口にできるだろう。
無理しなくてもいいから、食べれる分だけ食べなさい。」
「継…ありがとうございます…いただきます。」
出汁を沢山吸った揚げは、ふっくらと柔らかくて、噛み締めると優しい味がした。
「…美味しい…」
「口に合って良かった。
うちは、誰かが風邪を引いて寝込んだり、具合が悪い時は必ずこれなんだ。
俺も兄貴も、これだけは自信を持って作れるんだよ。
右京さんや詩音が悪阻の時はよく登場してただろ?」
「あ…そう言えば…」
しっかりと鰹節の味がする喉越しの良い出汁は、気分が優れない時でも少し口にできた。
ぽろっ
「右京さん…今頃…うっ、うえっ、うえっ」
また泣き出した俺の頭を優しく撫でてくれた継は
「ほら…お前まで具合が悪くなったら大変だろ?
しっかり食べて、優君の面倒も見なくちゃ。」
頷いて、泣きながら食べた。
しゃくり上げて、上手く飲み込めなかったけれど、一生懸命に啜って食べた。
片付けを終えた頃、お義父さんとお義母さんが帰ってきた。
お義兄さんは、右京さんに付き添うんだって。
継が二人にうどんを振る舞うと、お義母さんはそれを見て、また泣いていた。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!