711 / 829

旅立ちを見送る⑤

スーパーΩの俺達は、他人(ひと)の感情をキャッチできる。 お義母さんと右京さんは超視覚…色で。俺は超嗅覚…匂いで。 だから、だから… 「俺がもっと早く気付いていたら、ひょっとしたら助かったかも…こんな能力(ちから)があっても、肝心な時に役に立たないなんて…」 ぐしぐしと鼻を啜って泣くお義母さんに、お義父さんが 「香川先生も言ってただろ? 例え気付いたとしても、どうすることもできなかった。 誰のせいでもないし、偶然に起こったことで、その子の運命なんだ。 ちゃんと育つことのできない寿命の子だったんだ。 その子が天国で幸せになるように、みんなで見送ってあげて、って。」 「でも、でも、何とかできたかも」 「真澄…辛いのは分かる。 何度も言うけれど、一番辛いのは右京君だよ。 お前が泣いてたら、右京君だってずっと自分を責めてしまう。 右京君が笑って普通の生活ができるように、俺達がフォローしてあげないと。 旅立った子が、きっと優君を守ってくれるよ。」 「パパぁ…でも」 「『でも』は、なしだよ、真澄。 継も詩音君も…分かってくれるかい?」 継と俺は、顔を見合わせて…頷いた。 俺もお義母さんと同じように、自分の能力を役立てることができなくて、自分を責めていた。 悲しくて納得できなくても、お義父さんが言う通りに、右京さんをフォローするのが俺達家族の役目なんだ、って思った。 「お義母さん、右京さんは? ずっと泣いてるんじゃないの?」 お義母さんは、眉をきゅっとひそめると 「…そうなんだ。 『気付かなくってごめん、ごめんなさい』って、お腹を摩りながら…ずっと泣いてた。 潤と二人だけの方がいいと思って、そうしてきたんだけど。 あんな状態で、手術を受けさせるのも忍びなくて…」 そう言って、お義母さんはまた泣き出した。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!