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旅立ちを見送る⑦

継に抱かれ次第に落ち着きを取り戻して行ったが、頭は冴えまんじりともせず、やっとうとうととし掛けた頃、不思議な夢を見た。 何だか眩しくて、そっと目を開けると…三センチくらいの小さな光の玉が仁のベッドの上に。 それがゆっくりと降りてくると、まるで仁のほっぺにキスをするように優しく触れた。 全く、怖い とか 気持ち悪い とかいう感情がなくて…俺はただぼんやりと眺めていた。 すると“その子”は俺の所へやって来ると『抱っこして』と言わんばかりに胸元に擦り付いてきた。 まさか…“まめちゃん”!? 手の平を重ねるとその上に、ちょこんと乗った。そっと胸元に引き寄せて 「散歩に行こうって約束したもんね。」 と言うと、うれしそうに跳ねていた。 「また…何処かで会えるかな…」 そう呟くと、俺の頬にキスをして、今度はぐっすりと眠る継の頬にキスをして… ふっ と消えてしまった。 「まめちゃん!」 「…ん…詩音、どうした?」 「継っ!まめちゃんがっ、まめちゃんが!」 突然起こされて寝ぼけ眼の継は、泣きながら説明する俺の話を黙って聞いてくれた。 「『心配しないで。ありがとう。さようなら。』ってお別れに来たんだろうな。 明日、右京さんとみんなに教えてやってよ。」 そう言って俺を抱きしめる継の頬を冷たいものが流れ、身体が震えていた。 「…はい。」 カーテンの外が白々と明るくなるまで、俺達は無言で抱きしめ合っていた。 翌朝… ポンポンに腫れた目で下に降りていくと、もうキッチンに、同じように目を腫らしたお義母さんがいた。 おはようの挨拶もすっ飛ばして 「お義母さん!俺、夕べ」 「詩音君…夕べまめちゃんが来たよ。」 「え!?お義母さんの所にも!?」 「『も』って…詩音君の所にも!?」 それから俺達は夢中でお互いの出来事を伝え合った。

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