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旅立ちを見送る⑧
夢じゃなかったんだ。
安心させるために、ちゃんとみんなに『さようなら』を言いに来たんだ。
「右京さんに教えてあげなきゃ!」
「そうだね。ご飯食べたら行こうか。」
なんて相談をしていると、お義母さんの携帯が鳴った。
「え?こんな時間に…」
暫く話をしていたお義母さんは、途中でわんわん泣き出してしまった。
何があったの?
右京さんに何か?
携帯を置いたお義母さんは、固まる俺の方を見て微笑んだ。
「まめちゃん…右京君達の所にも来たんだって。
右京君、もう大丈夫だよ。
今日、ちゃんと手術して、まめちゃんをちゃんと見送るって。」
俺はお義母さんに抱きついて、二人で床に座り込んでまた泣いた。
「まーちゃん、いたいいたい?
しーお、いたいいたい、ないなーい!」
いつの間にか、優君が起き出してきていて、俺達の頭を交互に撫でていた。
「優君…」
「ぴかぴか、ばいばい。」
「優君も…まめちゃんとバイバイしたんだ…」
バイバイしながら、にぱぁーっ と笑う優君を抱きしめたお義母さんは
「さ、いつまでも泣いてられない。
こんなんじゃ、あの子が行くとこに行けなくなっちゃう。
せっかくサヨナラしに来てくれたのに。
詩音君、まめちゃんを笑って見送ろう!
パパにも知らせてくるっ!」
お義母さんは優君を抱っこして、お義父さんの元へ行ってしまった。
俺も継に伝えようと振り返った時、ドアの側に継がいた。
「継っ!」
ぼふっ と勢いよく抱きついて
「あのね、まめちゃんがね」
「うん、聞こえてた。
律儀な子だね…みんなにお別れを言いに来たなんて。
きっと、また、何処かで会えるよ。」
俺は継の胸に顔を埋めたまま、頷いた。
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