716 / 829
旅立ちを見送る⑩
その様子に慌ててフォローする。
「昨日のおうどんも、とっても美味しかったです!
今日は何を作ってくれるんですか?
楽しみです!」
途端に機嫌が直った継を更に煽てて何もかも任せて、チビ助達のお相手をしていた。
バタバタと過ぎた数日後…
俺達は右京さんの退院を待って、葬儀を快く受けてくれた麻生田家の菩提寺にいた。
独特の雰囲気に呑まれてるのか、チビ助達はやけに大人しい。
右京さんは…もう、泣いてはいなかった。
しゃんと背筋を伸ばして、最後まで見届けようとしていた。
その傍らでは、優君を抱いたお義兄さんが労わるように寄り添っていた。
(まめちゃん、会いに来てくれてありがとう。
また何処かで会おうね。)
お別れに来てくれたまめちゃんのことを祈りつつ…和尚様の朗々とした読経が響いていた。
柔和なお顔の、如何にも“修行を重ねて達観した”というオーラの和尚様が
「生きるのもあの世に行くのも、訳あってのこと。
現実には いなくなったけれど、あの世での修行が始まるんです。
命の大切さと家族の温かさを伝えに来たのかもしれませんな。
きっと、この子達…いや、あなた方みんなを守ってくれるでしょう。」
それを聞いた右京さんが、堰を切ったように泣き出した。
お義兄さんがそっと抱き寄せる。
「ぴかぴか、ばいばーい!」
「ばいばーい!」
あぁ、この子達には まめちゃんが旅立つのが見えてるのか。
二人がひらひらと手を振るその方向に向かって、俺も、泣きながら手を振った。
「まめちゃん、バイバイ!また会おうね!」
嗚咽しながらお義母さんが呟いた。
「…真理子さん、まめちゃんをかわいがって下さいね…よろしくお願いします…」
後はもう、涙で見えなくなった。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!