717 / 742

ポジティブ①

右京さんは“いつもの右京さん”に戻った。 俺達も…特別気を遣わないように、今までと同じように振る舞った。 ただ、右京さんは時々家事の手を止めて、ぼんやりとしていることも多かった。 その姿を見ても、俺達は敢えて気付かないフリをしていた。 とはいえ、俺達が思ってることなんて、右京さんには色で見えちゃってるんだけど。 きっと、泣いてる時もあると思う。 気になってお義兄さんに聞いてみた。 「お義兄さん、右京さん一人で泣いていませんか?」 「うん、大丈夫。右京と約束してるからね。 『泣くのは俺が側にいる時に』って。 「…一人じゃないなら…良かった…」 「詩音君、心配してくれてありがとう。 忘れはしない、覚えていることが供養になると思うけど、胸の痛みは時間が解決してくれるよ、きっと。 いつまでも引き摺ってたら、まめちゃんが逆に可哀想だよ…サヨナラ言いに来てくれた、あの子のためにもね、俺達は笑って過ごさなきゃ。」 「…はい。俺達も…忘れません。」 「うん、ありがとう。」 しんみりとしていたところへ、右京さんがやってきた。 「潤!じゅーん!…あ、詩音君も一緒にいたのか。」 「右京、どうした?えらく慌てて。」 右京さんは俺達を交互に見て、にっこり微笑んだ。 「あのね、結婚前に勤めていたお花屋さんの店長がね『今勤めてくれてる子の体調が悪くて休みが続いて、人手が足りなくて困ってる。もし子育てに影響がなければ一カ月程助けてくれないか?』って。 保育園も『短期なら』って預かってくれる所があるんだ。 お義母さんや詩音君に負担をかけるようなことはしたくないからね。 それでね、潤が許してくれるなら、少しの間お手伝いに行きたいなぁ…って思ってて。 で、どうかな?」 右京さんはお義兄さんを見つめ、かわいらしく小首を傾げた。 おねだりポーズだっ!
いいね
笑った
萌えた
切ない
エロい
尊い

ともだちとシェアしよう!