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ポジティブ④

俺は仁を抱っこしたまま、継の隣にぴったりとくっ付いて座った。 仁は甘えて俺にしがみ付いたまま。 継は…不機嫌さを隠そうとはしなかった。 「…継…」 甘えた声で名前を呼んだ。 威嚇と不機嫌MAXの中に、ふわりと甘さを含んだ匂いが混じった。 「継、仁の相手をありがとうございました。」 肩に頭を乗せなおも身体を擦り寄せる。 「おっ、いや…その…うん。」 瞬時に雲散霧消した負の匂い。 代わりにいつもの甘ったるい匂いに包まれた。 ホッとしたのも束の間、顎をくいっと掴まれて唇を塞がれた。 「んっ!?」 捻じ込まれていく熱い舌を受け入れて、情熱的なキスに酔いしれる。 仁!?…仁は眠くなったのか大人しくじっとしている。 溢れる唾液を全て飲み干され、やっと継が離れた。 目を潤ませ、息を落ち着かせる俺に継がひと言。 「詩音、お前は俺のものだから。」 え…まさか我が子にヤキモチ? さっきの頬っぺたへのキスくらいで? こみ上げるおかしさを必死でこらえながら、頷いた。 継が俺を溺愛してるのは分かる。分かるけど。 息子だよ!?継と俺の。 親子だよ? まだ赤ちゃんだよ? 何ライバル視してるの? しまった。心の声がダダ漏れで“そういう”匂いが出ていた。 また不機嫌になりかけた継に、慌てて 「俺が、伴侶として番として、心も身体も捧げているのは継、あなたですよ。」 拗ねないで、と頬にキスすると 「例え我が子でも、気に入らない。」 とそっぽを向いてしまう。 「けーい…」 愛してますよ、と耳元でささやけば、見る間に耳が真っ赤になった。 独占欲の強い(ひと)。 「この子は継と俺の愛情の証なんです。 だから、愛おしい。 あなたのように逞しく強く優しく育ってほしい。」 すやすや眠る仁の頭にキスした継は、もう一度俺の唇にキスをすると、席を立ってしまった。

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