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ポジティブ⑤
取り敢えず…怒りの匂いは消えたみたいだ。
全く…我が子と張り合う父親がどこにいるんだ。
ん?
あぁ、そうだ。遺伝もある。
お義母さんを溺愛して止まないあのお義父さんの息子だもの。
それに、絶対的αの特性はどうにもできない。
俺も、お義母さんや右京さんみたいに、それをちゃんと受け入れなくちゃ。
擽ったい気分だけど、愛する番に損得なく純粋に愛されるなんて…正直うれしい。
素直に、自分の気持ちをもっと伝えることができるようになればいいな。
ねぇ、仁。
君のパパは俺のことが好き過ぎて、まだまだ小さな君にヤキモチを焼くんだよ。
君が年頃になっても、俺にキスしたらどうなるんだろうね。ふふっ。
少なくとも親子ゲンカは嫌だよ。
あ、でもステキな恋人がそっと側に寄り添っているかもね。
俺もお義母さんみたいに『お嫁ちゃんと仲良く』できるかな。そうなりたいな…
そんなことを考えていたら、いつの間にか寝てしまっていたようだった。
甘い香りに包まれて、ふわりと身体が浮いたような気がした。
ゆらゆらと揺れるのが心地良くて、その香りに擦り寄った。
フッ と笑われたように感じたが、益々濃くなる匂いに引き摺られて、また夢の中へと歩き出した。
「…おん…詩音…ご飯だよ…」
甘い匂いが鼻を擽り身体をそっと揺すられ、ゆっくりと意識が浮上してきた。
「…ん…継?」
「まぁま、まんまー、まんまー!」
「…仁?まんま?」
いけない!ご飯の時間!?
ハッと飛び起きたら、継に笑われた。
「色々あったから、疲れてるんだろう。
早く食べてゆっくりお風呂に入って、休むといい。
さ、行こう。」
ぎゅっと手を掴まれ、みんなが待つリビングへ。
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