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ポジティブ⑦
右京さんが恐る恐る尋ねた。
「…潤?何かマズいことでも?」
お義兄さんは、あぁ、とか うーっ、とか唸っていたが、観念したように
「アイツは高校の時からの腐れ縁なんだ。
俺が若気の至りでやらかしたことを全て知ってる。
右京も粗方知ってると思うけど…
アイツが何かの拍子に、右京にバラしたら、って思うと…幻滅されてお前に嫌われるのが…怖い。」
俯いて意気消沈するお義兄さんに、右京さんは、はははっ と大笑いした後、
「なーんだ。そんなことか。
ねぇ、潤。
俺と出会ってすぐ、今までのセフレ達を全部切ったんだろ?
潤言ったよね、『お前だけだ』って。
結婚してからは俺だけなんだろ?
この先一生俺だけなんだろ?
じゃあ、それでいいじゃん。
…俺は何を言われても気にしない。
俺を愛してくれる潤を知ってるから。
迷わないし疑わない。」
堂々と宣言する右京さんが神々しく見えた。
「右京…」
お義兄さんは感極まって、涙を目に一杯溜めている。
俺達家族の熱視線に、ハッと気付いた右京さんは、ぼふっ と瞬間湯沸かし器みたいに見事に真っ赤になって
「あっ、その、えーっと…あーーーっ、恥ずかしいっ!」
と両手で顔を覆って突っ伏してしまった。
「右京ーーーっ!!!!!」
お義兄さんが椅子を蹴り飛ばし、右京さんに抱きついた。
「右京っ!右京っ!右京ーーーーーっ!!!」
「ぐえっ」
上からのしかかるように、ぎゅうぎゅうに抱きつくお義兄さん。
苦笑しながら、それを見守る俺達。
お義兄さんからは、凄まじいフェロモンがムンムン噴き出している。
あまりの甘い匂いに、俺までクラクラしてくる。
「…潤、苦しい…緩めて…」
やっと声を出した右京さんに、お義兄さんは
「うわっ、すまない!ごめん、右京!」
名残惜しげにその抱擁を解いた。
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