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ポジティブ⑩
一時間程で優君を迎えに行くお義母さんを見送ると、仁と2人っきりになった。
仁を膝の上に乗せて話し掛ける。
「右京さんも優君もいないから寂しくなっちゃった…お義母さんも出掛けちゃったし。
あっちのマンションに帰ったら、毎日こんなんだね。
…どうするのか、ちゃんとパパと話しなくちゃ。
仁ももう少し大きくなったら保育園だね。それとも幼稚園?
お友達も沢山増えるよ。
俺も…何処かに職場復帰できるかな…
でも、俺みたいなΩを雇ってくれる所なんてあるのかな…まさか継の会社に戻る訳にはいかないだろうし…」
「まぁま、いやいや。」
嫌々を覚えた仁は、何でも“いやいや”なんだ。
「もう少し…仁と一緒の時間を楽しもうか。
それも“いやいや”なのかな?」
「まぁま、まぁま、ぶー、ぶー。」
「ふふっ。ドライブはパパがいる時にね。
今度のお休みに何処かに連れて行ってもらおう。」
「ぱぁぱ、いーーっ。」
「うわぁ…そんなこと言ったら、パパ泣いちゃうぞ。
パパは仁のこと大好きなんだから。ね?」
「うーっ。」
親が親なら子も子だ。
継が知ったらショックを受けそう。
黙っておこう。
そうこうしているうちに、お義母さんと優君が帰ってきた。
「ただいまー!」「いまーー!」
「お帰りなさーい!優君、どうだったの?」
「いやぁ…余程気に入ったらしくてなかなか帰ろうとしなくて…連れて帰るのに往生したよ。
明日から、また大変だ…一体誰に似たのやら…これは潤だな。
潤もそうだったんだよ。」
ため息をつきながらお義母さんが嘆いている。
「優君、君の好奇心旺盛で積極的なのは、両親譲りだね!
前向きポジティブ、いいことだよ。」
「まーちゃ、ふぁい、ふぁい!」
「ん?ふぁい…ファイト!?
あははっ!そうだね!優君に一本取られたよ!」
俺達は顔を見合わせて大笑いした。
そうだね、ファイトだ!
明るく前向きに進もう!そう思った。
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