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疲労困憊(ひろうこんぱい)①
お昼ご飯を済ませた午後からのお義母さんは、とても疲れているように見えた。
「詩音君…一時間だけ優君お願いできるかな?
ちょっと昼寝させてー…」
「はい!大丈夫ですよ。
お義母さん、これから毎日ですから…ゆっくりできる時には休んで下さいね。」
「詩音君、ありがとう…本当に助かるよ。
いやぁ…優君の『いやいや』がこれ程堪えるとは…俺も年をとったということなのかな。
ごめん、お願いね!」
いつもパワフルなお義母さんがあんなにぐったりするなんて…
確かに仁の『いやいや』も大概なもんだけど、優君のそれもハンパないから。
ましてや、今日は優君にとって全てが新しいことばかりで、きっと楽し過ぎて帰るのが嫌だったんだろう。
部屋に戻るお義母さんを見送ると、優君の側に行った。
今から言うことを優君が理解できるかどうかわからないけど…仁と遊んでいる優君を抱っこしてしっかりと目を見つめた。
「 優君、保育園では先生やお友達といーっぱい遊んでいいんだ。
でもまーちゃんやママがお迎えに行ったら、お利口さんでちゃんと帰るんだよ。
優君のお家はここなんだからね。
『いやいや』は無しだよ。いいね。」
「しーお、いやいや!いやっ!」
「まぁま、いやいや!いやっ!」
「仁…何で仁まで…」
「いやっ!いやっ!」
「まぁま、ぶぅーーっ!」
大変なことになった。
いやいや と ぶぅーーっ の大合唱が始まってしまった。
せっかく休んでいるお義母さんを起こしちゃう!
堪りかねて遂に爆弾を落とした。
「こらっ!優君!仁!」
俺の大声と顔が怖かったのか、チビ助達は見る間に大きな瞳に涙を溜めて、ひぐっひぐっと しゃくり上げ始めて…
うわぁーーーーーーーんっ!!!
大音量で本格的に泣き出した。
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