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疲労困憊⑥

その日の夜… 「…という訳でね、もう大変だったんです!」 「それはご苦労さんだったな、詩音。 孤軍奮闘した訳だ。」 俺の話を継がおかしそうに聞いている。 「お義母さんがね、お義兄さんも継も、手を焼いて本当に大変だった、って。 小さい頃の継って、そんな暴れん坊だったんですか?」 「え?俺?暴れん坊… まぁ、お袋からは『兄弟揃って大変だった』とは聞いてるけど。 そうだな… 時間に束縛される保育園に行きたくなくて、玄関で靴投げたり鞄投げたりして暴れたことも何度かあったよ。 そしたらついにお袋がキレてさ。 俺の鞄からクレヨンを引っ張り出して 『保育園に行かない子には必要ないよな』 って、バキボキバキボキ…全色へし折ったんだよ。 あの能面みたいな顔は今でも忘れられない…」 「ええっ!?それで?その後ちゃんと保育園に行ったの?」 「問答無用だよ。それから暫くはお利口だったらしいぞ。 ある意味、お袋の方が暴れん坊のような気がする…」 「お義母さん…やっぱり凄い…」 二人で顔を見合わせて笑ってしまった。 「まだあるぞ。」 「聞きたいです!」 「昔、ピーマンが食べれなくてな。 どんなに細かく切っても、味を変えても、入ってたら一発で分かるんだよ。 嫌でぜーったい食べなくてさ。ハンストしたこともあったんだ。 お袋も負けてなくてさ。 毎日ピーマンメインの料理が出てくる訳さ。 こうなったら根比べだよ。」 「それで?どっちが勝ったの?」 「…お袋さ。 あの人、学校にも手を回して、俺だけ弁当持参。それもピーマンオンリーのおかずの。 もう、流石に参っちゃって、もういいや!って食べてみたら…これが美味かったんだよ。 久し振りのおかずでさ。 でもそのお陰で好き嫌いなく育ったんだけどね。 今だと『虐待だっ!』って通報されるかもな。」

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