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疲労困憊⑦

継よりも、お義母さんの方が…暴れん… いやいや。 やはり母親には敵わないのか。 親子のバトルが目に浮かんで、何だかおかしくなってきた。 声もなく、肩を震わせて笑う俺を 「しーおーんー」 と、少し口を尖らせて後ろから抱きしめてきた継。 すっぽりと抱きすくめられて、背中がほんわりと暖かい。 気持ち良くって、そのまま身体を預けていたかったが、悪戯心がムクムクと湧いてきて、くるんと振り向いて継を見上げて言った。 「仁も暴れたら、俺も一緒に暴れようかな。」 継は目を丸くして 「えっ!?詩音も!? 詩音もお袋みたいになるのか!?」 ふふっ。吃驚してる! 「詩音…“母は強し”と言うが… いつまでもかわいい俺の詩音でいてくれ。」 ちゅっ、ちゅっ 啄ばむようなバードキス。 また…そうやってキスで誤魔化そうとする。 目を閉じて甘いキスを受け入れる。 「んっ…継…んむっ」 次第に長く深くなる口づけ。 立っている足の力が抜け始めた。 ガッチリと抱え込まれ、身体がふわりと宙に浮いた。 心臓がドキドキ音を立てて跳ねている。 「詩音…無理はさせないから…ね?」 眉を寄せておねだり顔をする継。 え…今日も?今から? 俺、今日はクタクタなんだけど… 戸惑いと少しの拒絶の匂いが舞っている。 それに気付いた継は 「…そうか…そうだよな。 頑張りすぎて疲れてるんだよな…うん、そうだよな。」 と、見るからに意気消沈してしまった。 耳と尻尾が垂れた大型犬は、俺をそっとベッドに下ろすとぎゅっと抱きしめてきた。 「抱いて寝るのはいいだろ?」 俺を求める濃厚なフェロモンが漂う。 その匂いを嗅いでいると、頭がクラクラしてくる。 何だか…継がほしくて堪らなくなってきた。

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