737 / 829
家事と育児と仕事①
右京さんが仕事に復帰して二週間が過ぎた。
優君のお迎えが右京さんになったから、お義母さんもいつもの通常運転で、パタパタと家 のなかを動き回っている。
優君は『イヤイヤ』を少し卒業したみたいだ。
保育園にも随分慣れて、昼間思いっ切り遊ぶせいか、夜はぐっすりと寝るので助かってるらしい。
久し振りに一緒にお茶をする右京さんが、ぼそぼそと話し始めた。
「このまま仕事に復帰してもいいかな、なんて思い始めてるんだ。
みんなにはまだ内緒なんだけどね。
でも、まだ優には手がかかるし、二人目もほしいし…お義母さんや詩音君に負担も掛かるから、悩んでるんだ。」
「俺は負担だなんて思ってませんよ。
お義母さんだって。」
「でもね、主夫が外に出て働くって、やっぱり大変だよ。
うちはお義母さんと詩音君がいてくれて、家のことみーんなしてくれるだろ?
世間一般のお家はそうじゃない。
全て自分でやらなくちゃならない人達の方が多いんだよ。
甘えてるな、ってつくづく思う。
詩音君、ありがとう。」
右京さんはそう言って、ぺこりと頭を下げた。
「右京さん、やだっ!頭上げてっ!」
ゆっくりと頭を元に戻した右京さんは、申し訳なさそうに俺を見つめていた。
「本当に悪いと思ってるんだ。ワガママ言ってるってのも。
家事と育児の大変さはよく分かってるはずなのに。
今の仕事、とっても好きなんだ。
俺が自立するキッカケを作ってくれたから。
自分が好きなことして、人に喜んでもらえる上にお給料も貰えるなんて、贅沢だよね。
だから、働く形態を考えてもいいかなって。
フルタイムじゃなくて、午前中だけのパートとか、曜日限定で、とか。」
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!