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家事と育児と仕事③

右京さんからは『ありがとう』の匂いがしてくる。 上辺だけじゃなくて、本当にそんな風に見てくれてたのか。 単純にうれしい! 「右京さん、ありがとうございます。 そう仰ってもらえて、恥ずかしいけどうれしいです! お仕事のことは、やっぱりお義兄さんとちゃんと話し合った方がいいと思います。」 「そうだよね…また事後承諾にすると、今度はマジでキレるかもしれないから。 あー…主夫に優しくない世の中だよなぁ。 みんなこんな大変な思いをしてるのか…」 「右京さん、身体には十分気を付けて下さいね! 無理は良くないですから。」 「うん、ありがとう。 詩音君も無理しないでね!」 ふぇーん ふぇーん 「はい!あ、仁が起きちゃった。 ちょっと見てきます!」 ぱたぱたと、仁の元に駆け寄ると抱き上げた。 「仁、お目々覚めた?」 「まぁま!」 きゅ と抱きしめると甘いミルクと汗の匂いがする。 俺の胸にぐりぐりと顔を擦り付ける仁を見ながら、俺はやっぱり子育てをしながら仕事をする、というのは無理だな、と思っていた。 棚上げになっている同居のことも、今夜継とちゃんと話そう。 継と仁と三人での生活もそれはそれで良いのだけれど、この大家族の生活に慣れてしまうと、心地良くって離れがたい。 何かあった時にもすぐ助け合える。 お義父さんもお義母さんも、お義兄さんも右京さんも、同居を手放しで歓迎してくれてる。 甘えてもいいのかな。 右京さんが仕事に復帰するなら、お義母さんの手伝いは俺ができるし。 「まぁま、いー、いー。」 「ふふっ。いい子いい子って言ってるの?」 優しく逞しい子に育ちますように。

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