744 / 829

家事と育児と仕事⑧

翌朝、ぐっすり眠る継と仁を残し、そっと部屋を出て洗面を済ませるとキッチンへ向かった。 準備をしていると、お義母さんの元気な声がした。 「詩音君おはよう!ありがとうね!」 「いいえ、おはようございます!」 二人仲良く並んで支度を始めた。 お義母さんは手際よく、サッサとこなしていく。 同時進行で流しも綺麗に片付いていく。 感心して見ていると 「どうしたの?何か気になる?」 お義母さんには、思っていることが色で分かってしまうのだけれど 「あ…やっぱり凄いなって。 俺もいつか、お義母さんみたいにテキパキできるようになるのかな、って。」 ふふふっ、と笑ったお義母さんは 「慣れだよ、慣れ! 詩音君は今でも十分手早いよ。 俺より絶対段取りも手際も良くなる。この先楽しみだね。 さ、そろそろみんなが起きてくるよ。 右京君が、慌てて飛んでくる時間だし。」 そうお義母さんが言った途端に、ドタドタと右京さんが走ってきた。 「お義母さーーん!詩音くーーーん! ごめーーん!寝坊しちゃったぁ!」 「ははっ。右京君おはよう。 もうできてるから慌てないで。 先にちゃんと食べて。時間はあるから大丈夫だよ。」 「右京さん、おはようございます! ごゆっくりどうぞ!」 「あぁ、もう、俺、こんなの自分が情けない…ごめんなさい。」 「謝るのなし!しっかり食べて、外で元気に戦っておいで!」 「え?戦う?」 「そう。外に出たら七人の敵がいるんだ。 気合い入れて頑張れってこと。 あ、でも負けるが勝ちってこともあるから、そこら辺は臨機応変にね。 お弁当もできてるよ。さ、早く食べなさい。」 「…ありがとうございます…」 右京さんからは、戸惑いと後悔とやる気満タンの匂いがした。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!