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家事と育児と仕事⑨
いつもの如くドタバタとみんなを送り出して、怒涛の時間が終わった。
仁を側に置いて、お義母さんと片付けを終えると、これまたいつものお茶を一服。
「…お義母さん、あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど…」
仁を抱っこしながら、微笑んだお義母さんは
「ん?どうしたの?」
「…あの…仁ってαでしょ?
俺のΩの匂いに左右されるってことあるんですか?」
「どんな子も、元々家族に対しては免疫があるから、心配いらないよ。
でも、“Ωの”っていうより、“ママの匂いに”っていう方が正しいかも。
親が子を思うように、子供も親を思ってるからね。
ママがうれしいとうれしいし、悲しいと泣きたくなっちゃう。
パパに対しては、またちょっと違うんだよ。
大好きなんだけど、何たってママを奪い合う一番身近なライバルだからね!
…何か困ったことがあったんだろ?」
何かを察したらしく、お義母さんが満面の笑みで尋ねた。
俺は真っ赤になりながらも、昨夜の出来事をボカしながらも伝えると、お義母さんはウンウンと頷いて
「今だけの辛抱さ。
もう少し大きくなったら落ち着くから大丈夫だよ。
また週末、仁君を預かるから、継のご機嫌取りしておいで。
詩音君は、『詩音君』という一人の人間で、夫 で、母で、家 のかわいいお嫁ちゃんで。
役割が沢山あるけど、どれもよく頑張ってる。
ウェイトはその都度違うけど、ホント大変だよね。
だから、みんなを頼っていいんだよ。」
「お義母さん…」
「あ!継に見つかったら『お袋がまた詩音を泣かしたっ!』って怒られちゃう。」
お義母さんはそう言いながら、俺の頭を優しく撫でてくれた。
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