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家事と育児と仕事⑩
やっぱり俺は、この人達と一緒に寄り添って歩んでいきたい。
「お義母さん…お願いがあります。」
お義母さんは、ふっ と微笑んだ。
多分、俺の心の色が見えているのだろう。
「改まって、なぁに?」
「あの…本当は継からきちんとお願いをしなくちゃならないんですけど…俺達もこのまま、ここに置いて下さいっ!
お邪魔かもしれませんが、お義母さん達と一緒に暮らさせて下さいっ!」
頭を下げる俺に、お義母さんは ぴょこっ と跳ねて俺のそばに来て、きゅっ と抱きしめてくれた。
「いつそう言ってくれるのか、ずっと待ってたんだ。無理強いできないことだからね。
詩音君、これからもよろしく!
パパも潤も右京君も優君も、みーんな喜ぶよ!」
うふふ とうれしそうに笑うお義母さんから、優しい花の匂いがしてくる。
「ありがとうございますっ!
俺…不器用だから、きっと復職しないで専業主夫になると思うんです。」
「勿論!それは詩音君が決めることだから、思うようにしたらいいんだよ。
『無理はしない。
言いたいことはちゃんと伝える。』
今まで通り、ううん、改めるところはちゃんと直していこう。
はあーーっ…やっと気持ちが落ち着くよ…
いつかな、いつ言ってくれるのかな、って待ち遠しくて堪らなかったからね。」
「…ごめんなさい…」
「謝る必要はないんだよ。
あー、うれしくってうれしくって…今晩、何のご馳走にしようかなぁー!」
「お義母さん、毎日ご馳走です!」
「あははっ!そう言ってもらえるとうれしいな。
そうだ!パパに電話してくる!」
そう言って、スキップしそうな勢いで行ってしまった。
継の不満は解消できるかどうか分からないけれど、麻生田家の役に立つヨメになろうと、強く思った俺なのだった。
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