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デート♡デート♡デートpart2⑦
気不味い雰囲気と匂いの充満する車内。
エンジンを掛けたまま、無言で停車し続ける継。
ポツポツと小雨まで降ってきた。
何だか、もう…行くのが嫌になってきた。
「継、もう今日は」
と俺が言い掛けた途端、継が慌てて
「ご飯!ご飯食べよう!
せっかく予約してるんだ。ドタキャンは申し訳ないだろ?
な、ご飯食べよう!」
俺の返事を待たずに車を発車させた。
このまま家に帰っても、俺達の分は作ってないからお義母さんにも迷惑掛けるし。
仕方ないか…キャンセルすれば店にも迷惑が掛かる。
ご飯だけ食べて帰ろう。
これだけでも立派なデートじゃないか。
自分を無理矢理納得させて、窓ガラスを打ち始めた雨粒を眺めていた。
涙みたい。
俺も泣きたい気分だよ。
そうして連れてこられたのは天ぷら屋さん。
ぼんやりしていて、正直、何を提供されて食べたのか、朧げな記憶しか残っていない。
ただ、やたらと俺に気を遣う継と、それを揶揄う店主のやり取りに辟易していた。
早く帰りたい。いや、帰ればお義母さんが心配する。どうしよう。
愛想笑いも限界だった。
苦行のような時間がやっと過ぎて、店の暖簾をくぐった時には、心底ホッとした。
「詩音。」
「…………」
「詩音。何か言ってくれないと分からない。」
「…………」
「ねぇ、しお」
「ご馳走様でした。」
「詩音…」
「一緒にご飯食べましたから、これでデートは終了です。
何処か適当なホテルの前で停めて下さい。
俺はそこに泊まりますから。」
「どうして?もう予約してあるんだよ?」
「継は俺を抱くことしか考えていない。
だから別のホテルに泊まります。」
「そんなことない!落ち着いて!
そんなこと言わないで。ね?」
窓を叩く雨音が一際大きくなった。
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