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溢れ出る思いside:継④
そうだ。
風呂に入ってリラックスして…残念だが今夜は詩音を抱きしめて眠るとしよう。
「詩音、ゆっくり風呂に入っておいで。
いつもバタバタと忙 しないからな。」
「…継からお先にどうぞ…」
「そうか?じゃあ俺から入ってくるよ。」
そっと詩音から離れバスルームへ向かおうとした。
ん?
詩音の匂いが追い掛けてくる…でも、詩音は動かない。
諦めに似た境地で、その場を離れた。
頭からお湯を被り、暫く何も考えずに佇む。
俺の煩悩よ、全て流れてゆけ!
そんな心と裏腹に、元気に天を向き始める愚息が恨めしい。
一度出したほうがいいか…早速右手のお世話になった。
まさか久し振りのデートで、自分で自分を慰めることになろうとは。
「うっ」
手の平の白濁液をシャワーで流し、何とも言いようのない気分で湯船に浸かった。
また香川先生に薬を調合してもらうか…
笑われるよな、きっと。
そんで、その話が伊織さんに伝わって揶揄われるんだ。
医者の守秘義務はどうなってんだ!?訴えるぞ!
自分だって性欲オバケのくせに。
あぁ…何だか情けなくなってきた。
早く詩音をチャージしないと、メンタルがやられる…
勢いよくお湯を蹴散らして上がり、身支度を整えると詩音が待つソファーに戻った。
詩音はさっきと同じようにちょこんと座って待っていた。
そっと手を握り、詩音を誘導してバスルームに連れて行った。
「時間は気にしなくていいから、ゆっくり入っておいで。」
詩音は何か言いたげに口を動かしたが、こくんと頷いてドアの向こうに消えていった。
俺はしつこいとは思いながらも、いつまでもその後ろ姿を見つめていた。
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