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溢れ出る思いside:継⑥
我ながら意地悪いと思うが、夫夫 なんだ、言いたいことはちゃんと言葉に出して言って欲しい。
いつもいつも俺ばかりが本音を言い出すのは、フェアじゃない気がする。
偶には詩音から、思いの丈をぶつけてきてほしいし誘ってほしい。
相変わらず黙する詩音からは、お喋りな甘ったるい匂いが止めどなく流れてくる。
ケイ ドウシテ?
ダキタクナイノ?
アイシテル
アイシホシイ
あまりにストレートな感情に、吹き出しそうになるのを必死で堪えて、詩音の髪の毛を撫で梳いてやる。
ダキタイヨ
アイシテルカラ
オマエガホシイ
詩音以上に濃くて甘い俺の匂いを嗅いで、恐らく詩音の顔は真っ赤になっているだろう。
『押してもダメなら引いてみな』なんて、昔の人は上手いこと言ったもんだ。
さて詩音。
いつまで我慢大会をするつもりなんだ?
せっかくの久し振りの二人の夜を無駄に過ごすつもりか?
俺は…限界だよ。
ゆっくりと目を開くと、上目遣いで俺を見つめる詩音の瞳とぶつかった。
その瞳には涙の膜が張り、今にも零れ落ちそうに光を放っていた。
「詩音…」
ちゅっ
身体を精一杯伸ばして、詩音が俺にキスをしてきた!
そして俺の首にそのたおやかな腕を巻き付けると、離れなくなってしまった。
鼻先が丁度番 の印に当たる。
詩音の耳の後ろや首筋から、俺を誘う蜂蜜のような甘くて濃厚な匂いが溢れ出し、俺に纏わり付いてくる。
「詩音…そんなにくっ付いたら眠れないよ。」
諭すように告げる俺の声は掠れている。
詩音は嫌々と子供のように首を横に振り、元の位置に戻ると、ぺったりと俺の胸に擦り付いてきた。
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