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愛し合う夜side:詩音①

ふっと目が覚めた。 喉が痛い。 身体もあちこち痛い。 部屋の空気が…甘過ぎて淫猥な匂いで鼻がおかしくなりそう。 そして目の前には…逞しい胸が規則正しく上下に動いている。 継の大きな腕にすっぽりと巻かれて抱きかかえられている。 肌触りの違う布団と見慣れない間取りに戸惑うが、そうだここは自宅じゃない…ホテルだ…自分から『抱いて』と強請って…乱れに乱れた昨夜の自分を思い出した。 かあっ、と身体が火照り、居ても立っても居られなくなる。 ドキドキと鼓動は激しく打ち始め“このままじゃ心臓が止まりそうだ、とにかくここから抜け出そう”と、絡まる腕と足をそっと退かせたその瞬間 「何処に行くんだ?」 継っ!起きてた!? 「…あの…シャワーを…」 「じゃあ、俺が連れて行ってやる。」 「え?自分で、うわあっ!」 有無を言わさずふわりと抱き上げられ、移動する最中もバードキスが降ってくる。 仕方なくそれを受け入れながらバスルームへ運ばれ、当然のように一緒に入ろうとする継に 「継?俺自分で」 「ある程度は掻き出したけど、最後まで自分ではできないだろ? ほら、いいから。」 と無理矢理連れ込まれた。 確かに自分では、やり難い。後でお腹を壊すのも嫌だ。 「詩音、ここでもシたい…」 「無理ですって!俺が倒れてもいいんですかっ!?」 気乗りのしないまま身を任せ、ちょっと意地悪く仕掛けてくる継を牽制しながら身体を綺麗にしてもらった。 視線を自分の身体に這わせると、あちこちに散りばめられた赤い印と、所々に噛み跡が付いていた。 どれだけ愛されたのか、見ただけで分かる。

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