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愛し合う夜side:詩音②

甲斐甲斐しく俺の世話を焼く継に身体を預けて、俺は心も身体もすっかり満足していることに気付いていた。 一番大切な男に求められ愛されている。 こんなにうれしいことはない。 ウレシイ ウレシイ ケイ ダイスキ アイシテイマス ふわふわと無自覚な甘い匂いが放たれる。 ヤバい!何だか、仁を生んでからユルくなってるのか!? 自分の意思に関わらず漏れ出す匂い。 すんすんと鼻を鳴らした継が破顔した。 「詩音…俺もうれしい…愛してるに決まってるじゃないか。 酷くしないから、もう一度抱かせて…」 そんな色っぽい顔で、そんな声でささやかれて、そんな匂いを振りまかれたら、拒絶なんてできない… 催眠術にでも掛けられたように、うっとりと継の瞳を見つめ、首に腕を巻き付けた。 思いを込めて首筋にそっと唇を押し当て 「…激しくしないでね…」 と、叶うかどうか分からぬ願いを口にした。 「分かってるっ!分かってるよ!」 どこまで“分かっている”のか怪しいけれど。 こんな継のお願いを受け入れるなんて、俺もどうかしている。 既に継は甘やかなフェロモンを撒き散らしながら、俺の首筋を舐め始めていた。 Ωの本能とでも言うのか、α()を受け入れたがっている俺がいる。 この人の子種がほしい。全てがほしい。 浅ましい程に継を求める思いに苦笑する。 少し前までは、そういう風に思う自分を嫌悪したり責めたり、落ち込んだりもした。 けれど、自分の心に素直になって見つめ直した時、『愛され求められる喜び』に気付いた。 愛する人に心底愛される…何て幸せなことなんだろうと。 継はくすくす笑う俺を不思議そうに見つめていたが、優しくキスしてきた。

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