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俺か仕事か、どっちだ!?③
手を差し伸べたり口出ししなくても…直接関わらなくても見守る優しさもあるんだ。
…そう言えば、右京さんが仕事に復帰する時にも敢えて何も言わなかった。
お義母さんは、人見知りも物怖じもしない。
積極的で、誰かが困ってる時には口も手も同時に出すタイプだと思ってた。
そんなお義母さんが黙っている。
きっと、二人を見ていてもどかしくて意見したくて堪らないはず。
「お義母さん…『見守る』『待ってる』って、ちょっと辛い、ですよね。」
「そうだね。でも、それが二人のためなんだから。」
ふふっ、と微笑んでコーヒーカップに口を付けた。
「でも正直言うと…頼りにされたらうれしいかも。
俺って何でも口も手も出しちゃうから。」
えへ
あ…かわいい…かわいいなんて失礼だとは思うけれど、俺もこんな風に年を取りたいなって思う。
この間のデートのことやら仁の話をしていると、玄関の鍵を開ける音がしてお義父さんが帰ってきた気配がした。
「あっ、パパだっ!」
パタパタと玄関に駆けて行くお義母さんの後ろ姿を見ていると、いつまでもラブラブでいいなって羨ましくなった。
「詩音君ただいまー!」
「お義父さん、お帰りなさい!」
「はい、お土産。
あー、右京君は…まだだったかな?」
「ありがとうございます!ええ、まだですね。
あと一時間くらいかと…」
「そうか。じゃあ早い者勝ちで、かーちゃんと先に食べるといい。
ここの焼き芋は美味いんだよ。
俺も帰り道、先に食べながらきたんだ。」
「そうなんですか!?ふふっ、楽しみです!
お義母さん、熱々のうちにいただきましょう!」
お義父さんの腕をうれしそうに組む、お義母さんに声を掛けた。
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