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俺か仕事か、どっちだ!?⑥

「ただいまー!しおーん!じーん!」 継だっ! 俺はダッシュで玄関に走って行き、靴を脱ぎかけてる継に飛び付いた。 バランスを崩しかけた継は 「うおっ…と…詩音?何があった?」 俺はただ、ふるふると首を振り継に抱きつくことしかできなかった。 継はぽんぽんと俺の頭を撫で、継の胸に顔を擦り付ける無言の俺を抱き寄せた。 どのくらいそうしていたのだろうか。 継の匂いと温もりに満たされた俺は、はっと我に返った。 「…帰ってきたばかりなのに、ごめんなさい。 お帰りなさい。」 継は俺を抱きしめたまま、靴を脱ぎながら聞いてくれた。 「ただいま。どうしたんだ?」 実は…と、先程のお義兄さん達のことを話すと、また泣きそうになっている俺にキスをして 「大丈夫だよ。 兄貴、きっと頭を冷やしに出て行ったんだと思う。バカなことはしないだろうから。 もう少ししたら電話してみるよ。 心配するな。 右京さんは…お袋がついてるんだろ? じゃあ、そっちも心配いらないと思う。 俺達はチビ助達の面倒をみよう。 さ、部屋に行こう。仁も待ってるよ。」 継に大丈夫、と言われたら本当にそう思えてくるから不思議だ。 ぴったりとくっ付き、肩を抱かれながらリビングに戻ると、仁と優君がじゃれついてきた。 「ぱぁぱ!おーえり!」 「けい、おかえり!」 「ただいまぁ!いい子にしてたか?」 継は俺を含めて三人を抱き寄せると、ぎゅうっとハグしてきた。 きゃははっ きぃーーーっ 大喜びのチビ助達にキスの雨を降らせ、俺にも特大のリップ音付きのキスをした…と、何か視線が… うわぁーーーっ、お義父さんっ! によによと微笑むお義父さんの視線が… 「仲良きことは、良きかな良きかな。 こっちはいいけど、あっちはな…さて、そろそろ潤に電話をしてみるか。」 と大きなひとり言を言いながら出て行ってしまい、残されたのは…フリーズする俺にキスしまくる継と、大騒ぎのチビ二人…だった。

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