782 / 829
俺か仕事か、どっちだ!?⑧
お義母さんは、そんな右京さんの背中を摩りながら
「右京君の気持ちはみんなに伝わってるよ。
それで?
そろそろ一カ月経つけど、右京君はどうしたいの?
その話の途中で“誰かさん”は脱走したんだよね?」
うっ、と低く呻いたお義兄さんがバツの悪そうな顔をした。
「だから…悪かったって言ってるじゃないか。」
右京さんは一旦頭を上げて、お義兄さんの方を向いて言った。
「できるなら、このまま働かせて下さい!
その代わり、働く時間や回数は減らします。
週三回の午前中だけ、これなら優のことも、お家のこともなるべく迷惑掛けなくて済むと思う。
潤、お願いします。」
再び頭を下げる右京さんにお義兄さんが尋ねた。
「子供ができたらどうするんだ?」
ハッとした顔になった右京さんは
「…もし、そうなったら…辞めます。」
「俺より、お袋や詩音君にお願いしなくちゃならないんじゃないか?」
穏やかになったお義兄さんの声に頷いた右京さんは
「お義母さん、詩音君。
俺、お店でお客様の笑顔を見るのが幸せなんだ。
今よりも仕事の量も時間もセーブするから、お家のことも協力できると思います。
でも、また迷惑一杯掛けちゃうけど、仕事、続けさせてもらいたい…図々しいのは承知なんだけど、優のこともお家のこともお願いしてもいいですか?
お願いしますっ!」
深々と頭を下げる右京さんの側に近寄り、そっと両手を包み込んだ。
「右京さん、無理だけはしないで。
もっと自分の身体と心を大切にして。
それを約束してくれるなら、俺はどれだけでも協力します!」
「詩音君…ありがとう…ごめんね。
よろしくお願いします…」
「良かったね、右京君。
俺の気持ちはさっき伝えたから。」
「…お義母さん、ありがとうございます…」
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!