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俺か仕事か、どっちだ!?⑧

お義母さんは、そんな右京さんの背中を摩りながら 「右京君の気持ちはみんなに伝わってるよ。 それで? そろそろ一カ月経つけど、右京君はどうしたいの? その話の途中で“誰かさん”は脱走したんだよね?」 うっ、と低く呻いたお義兄さんがバツの悪そうな顔をした。 「だから…悪かったって言ってるじゃないか。」 右京さんは一旦頭を上げて、お義兄さんの方を向いて言った。 「できるなら、このまま働かせて下さい! その代わり、働く時間や回数は減らします。 週三回の午前中だけ、これなら優のことも、お家のこともなるべく迷惑掛けなくて済むと思う。 潤、お願いします。」 再び頭を下げる右京さんにお義兄さんが尋ねた。 「子供ができたらどうするんだ?」 ハッとした顔になった右京さんは 「…もし、そうなったら…辞めます。」 「俺より、お袋や詩音君にお願いしなくちゃならないんじゃないか?」 穏やかになったお義兄さんの声に頷いた右京さんは 「お義母さん、詩音君。 俺、お店でお客様の笑顔を見るのが幸せなんだ。 今よりも仕事の量も時間もセーブするから、お家のことも協力できると思います。 でも、また迷惑一杯掛けちゃうけど、仕事、続けさせてもらいたい…図々しいのは承知なんだけど、優のこともお家のこともお願いしてもいいですか? お願いしますっ!」 深々と頭を下げる右京さんの側に近寄り、そっと両手を包み込んだ。 「右京さん、無理だけはしないで。 もっと自分の身体と心を大切にして。 それを約束してくれるなら、俺はどれだけでも協力します!」 「詩音君…ありがとう…ごめんね。 よろしくお願いします…」 「良かったね、右京君。 俺の気持ちはさっき伝えたから。」 「…お義母さん、ありがとうございます…」

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