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芽生え④
みんなに「お休みなさい」の挨拶をして(お義母さんと右京さんにはアイコンタクトで『大丈夫』と伝えた)、うつらうつら夢の中へ行きかけている仁を抱っこして部屋に戻ってきた。
昼間も良く遊んだ仁は、少し背中をとんとんとしてやると寝付いてしまった。
寝る子は育つ。
布団をそっと掛けて振り向くと、何か言いたげな継の視線と打つかった。
「詩音。」
「はい?」
「…俺に何か…隠し事、してないか?」
ドキッ
「え?隠し事?
…あ…三時のおやつに継の大好きな『博楽堂のたまごぷりん』食べちゃったの…バレましたか?」
口当たりがまろやかでさっぱりとした甘さで、余計な添加物も入れておらず、材料もとことんこだわった“たまごぷりん”は、今大人気で中々手には入らないのだ。
「えっ…たまごぷりん…食べたのか?」
「はい、お義母さんと。ごめんなさい。」
「…残って…ないよな?」
「はい、頂き物で二個しかなくって…継に残しておこうと思ったんですけど…ごめんなさい。」
「…いや、そうか、いいんだ…うん。」
がっくりと肩を落とした継の横に座り『ゴメンナサイ』と呟いた。
そっちがバレたのか。
それもマズいけれど、あっちじゃなくて良かった。
継は残念そうにしていたが「もういいよ」と俺の頭を撫でてくれた。
明日病院に行く前に、お義母さんに頼んで寄ってもらって朝イチで並んで買ってこようかな。
「継、明日お散歩がてら行ってきますね。」
「わざわざ行かなくてもいいからな。」
「え…だって俺ばっかり」
「無理して食べたい訳ではないから、いいんだよ。
それより…詩音、今夜いいか?」
無理無理無理
「あ…でも…今夜はちょっと…」
「何で?」
「明日お義母さんと出掛けるのが早いので…起きるのが辛いと、その…」
「…分かった。お休み。」
あ…拗ねた。
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