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芽生え⑧
帰りの車の中で
「お義母さん、ありがとうございます。
またご迷惑を掛けますがよろしくお願いします。」
「何言ってんの!大歓迎だよ!
家族が増えるって、こんなうれしいことないよ!
パパに報告しなくっちゃ!
…詩音君、何か心配事あるの?」
お義母さんには色でバレるから、誤魔化せない。
俺は、人知れず抱えていた思いを吐き出した。
「お義母さん…まめちゃんみたいに、この子…突然いなくなっちゃったら…どうしたらいいの?
妊娠するのが怖かった…子供ができるのはうれしくて、待ち望んでいたことなのに、もし…もしそうなってしまったら、どうしよう、って…うっ」
ぽろぽろと堪えていた涙が溢れて止まらなくなった。
心の片隅にあった棘のような思いの正体はコレだったんだ。
お義母さんはウインカーを出すと、路肩に寄せて停車した。
そうして、俺の両手をぐっと握って
「大丈夫。前に香川先生も言ってただろ?
まめちゃんの寿命だったんだよ、って。
あの子、ちゃんとお別れに来てくれただろ?
右京君のところにも、きっとまたやってきてくれる。
詩音君は詩音君でこの子をしっかり愛してあげて。
『そんなこと考えなくてもいい』って言っても、詩音君の性格ならそんな訳にもいかないよね。
でも、毎日毎日
『この子大丈夫なんだろうか』
『いなくなったりしないんだろうか』
ってマイナスのオーラを与えるよりも、
『愛してるよ』
『元気で出ておいでー』
って言ってあげたほうが、この子はうれしいんだよ。
ほら、ママさん!赤ちゃんに笑われるぞ!
ところでこの子は何て呼んだらいいの?」
「…キラキラしてるって教えてもらったから…『キラちゃん』…」
「そうか!
おーい、キラちゃん!ママ、泣き虫さんだけど、根性もあるし頑張り屋さんだから、あんまりママを泣かさないでね!」
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