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芽生え⑩
次々と普通通りに帰ってきた男性陣は、テーブルの上のご馳走を見つけると、口々に
「おっ、今日は何の日だ?」
「美味そう!えっ、何の記念日?右京、まさか俺達の初エッ、痛っ!」
「え?結婚記念日にはまだ早いし、誕生日でもなく、何の記念日だったっけ…」
とそれぞれに頭を悩ませていた風で。
俺は慌てて継を部屋に引っ張っていき、告白した。
「継、あの…今日病院に行ってきたんです。」
「何っ、病院!?詩音、何処か具合でも」
「…仁に弟か妹ができました!
あの時の予感は…当たっていたようです。」
「えっ!?本当!?本当に!?…
やったぁー!でかした、詩音!」
継は俺を抱きしめて降るようなキスをしてくる。
飛びっきりの甘い匂いに包まれて、擽ったくてうれしくて、思わず泣いていた。
…やっと冷静になった継が、俺の涙を舐め取りお腹を撫でてくれる。
「俺たちのところへ来てくれてありがとう…
ようこそ、麻生田家へ。」
それに答えるように、ふわふわとうれしい匂いを振り撒くキラちゃん…
(君のパパだよ)
俺は継の手の上にそっと両手を重ねた…
お風呂を済ませたり着替えたりと、やっとみんなが落ち着いて席に着いた頃、継が声高らかに発表した。
「えーっと…コホン…仁がお兄ちゃんになります!
手を焼かす俺達ですが、今後ともよろしくお願いしますっ!」
うわぁーい!
やったなっ!
おめでとーーう!
みんなから祝福と喜びと労りの匂いが振り撒かれ、仁を抱っこして継に後ろから抱きしめられながら、それらを愛おしく受け止めていた。
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