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憂慮①

俺のお腹に新しく芽生えた命を加え、今日もまた麻生田家はいつもの安定の賑やかしさで三人を送り出し、朝の怒涛の出勤ラッシュを終えたばかりだった。 珍しくお義父さんがいることで、お義母さんからはふわふわとうれしい匂いが振り撒かれている。 「パパ、そろそろ時間じゃないの? 予約してるんでしょ?」 「あぁ、そろそろ出掛けなくちゃ。 かーちゃん、寂しいけどひと時のお別れだ…」 「もう、パパ…」 うわぁ…始まった。 毎朝恒例の行事と化した、お義父さんの“行ってきますタイム”。 見て見ぬ振りをするのか、さり気なく隣の部屋へ移動するか…よし、今日は隣の部屋へ移動だ! 仁を抱っこして、そーっと客間に逃げ込んだ。 窓から外の様子を伺うと、二人が仲良く玄関から出てきた。 「じぃじー!いってらー!」 仁に気付いたお義父さんが手を振って応えてくれる。 「行ってきまーーす!留守番よろしくー!」 「はーい!行ってらっしゃーい!」 やれやれ。 俺達も、幾つになってもあんな風に仲良しでいられるのかな。ラブラブでいたいなぁ… 「詩音君、気を遣わせちゃってごめんね。」 「いいえ!ふふっ、ご馳走様でした!」 「まーちゃ、だっこー!」 「仁君、おいで!」 お義母さんに抱っこされてご機嫌な仁は、きゃいきゃいはしゃいでいる。 「お義父さん、今日は検診ですか?」 「そうそう。年に一度の健康診断。 俺は先月行ってきたけど、パパはあの待ち時間が嫌いで延ばし延ばしになってたんだよ。 香川先生に叱られて、やっと観念して。 ふふっ、子供より訳悪いよね。」 「まーちゃ!おりる!あっちいくー!」 仁の好きなテレビ番組が始まったようだ。 「はいはい。 …何も引っ掛からなければいいんだけど。」 走って行く仁の後ろ姿を見つめながら、お義母さんは心配そうに呟いた。

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