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憂慮②
「…パパ、遅いなぁ…」
時計は2時を過ぎていた。
「朝イチの予約だから、午前中で終わるって言ってたのに…」
「予約が多くて混み合ってるのかもしれませんね。」
「うん…あ!パパからだっ!えーっと…
『連絡遅くなってごめん。
ついでに用事済ませて帰るから遅くなるよ。』
ええっ!?たったこれだけっ!?」
俺は仁に食べさせる時に、恐縮しながら先にいただいてたのだが、お義母さんはお義父さんと一緒に食べようと、お昼ご飯を待っていたのに。
短文の素っ気ないメッセージにぷんすこ怒っているお義母さんは、何やら“お怒りの長文”を送っていた。
「あーっ、本当に、もうっ。
詩音君、俺ご飯食べるね!」
「はい、せっかく待ってたのに…ごゆっくりどうぞ。」
そしてその夜、お義父さんは本当に“遅く”帰ってきた。
「パパっ!お昼も晩ご飯もいるともいらないとも連絡しないで一体何処で何」
お義父さんは、文句を言い掛けるお母さんの言葉を遮り、神妙な声で
「真澄、ちょっと来てくれないか?」
「えっ!?はっ、はい。」
首を傾げながら、お義母さん達は部屋に行ってしまった。
“かーちゃん”じゃなくて名前で呼んでる…
お義父さんからは、疲労と何かしら不安や心配、そしてお義母さんへの愛情なんかが混ざった匂いがしていた。
どうしたんだろう。
まさか検査の結果で何か見つかったんだろうか。
悶々としていると、仁を寝かしつけてくれた継がリビングに降りてきた。
「詩音、親父達どうかしたのか?」
「継…実は…」
俺は昼間からのこと、そして今お義父さんから感じた匂いのことを伝えた。
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